晴れ時々走れ

マラソン、トライアスロン、人生について

福士さんのインタと真夏のレース

きょうは、暑い暑い炎天下の北海道マラソンが行われました。今年は出場しませんでしたが、大勢の知り合いの撃沈リポートを読んで、真夏のレースの過酷さにぞっとしながらも、汗だくになって脚を攣りながら完走した人ならではの達成感が伝わってきます。

夏のレースは本当にしんどい。思い通りにいかない。

自分は一応、サブスリーランナーですが、北海道マラソンでは過去5回出場して、1度だけ2時間53分で走り、その他は3時間6分、11分、12分、23分という記録でした。最近の札幌は北海道マラソンのとき、必ず暑さがぶり返すジンクスがあり、一番酷い年はコースの途中であまりにきつくて路肩に座り込んで寝てしまいました。また、別の年にはフィニッシュ後に脱水症状と低血糖で両足が攣って倒れて悶絶し、全身に痙攣が伝わった挙句にしゃべれなくなり、見ず知らずの通行人の方々に介抱された時もありました。一度、大通公園の救護テントのなかを覗いたことがありますが、点滴を受ける人たちがベッドに並び、さながら野戦病院のごとくでした。

 

さて、今さらですが、リオデジャネイロオリンピック福士加代子選手のインタビューについてコメントしたいと思います。一市民ランナーの意見なので、そのへんは差し引いて感じてもらえたらと思います。

 

「金メダルとれなかった~!本当、しんどかった。でも金メダルを目指していたから最後まで頑張れた。こんなに頑張った自分はいないかな」と福士選手はフィニッシュ後のインタビューで語りました。一部の方々からは相変わらずの批判がありましたが、私は汗まみれでぐちゃぐちゃの笑顔で語る彼女に「よく頑張った!」と心から思い、彼女の気持ちも分かるし、とても気持ちの良い清々しいインタビューだと感じました。

一度でも夏のフルマラソンを走れば、その難しさ、しんどさは理解できます。冬のレースとはまったく別種目です。冬のマラソンは洗練された走りを競うレースですが、夏はひたすら我慢しながら泥臭く闘うサバイバルレースです。

そして、冬と夏の大きな違いは「つぶれるリスク」がまったく異なるということです。マラソンで一度つぶれれば復活はありえません。汗が全開で噴き出して消耗し、筋肉はエネルギーが枯渇して力が入らず痙攣が始まり、内蔵は踊り狂い、熱を浴びた頭はアラートを鳴らし続けます。いったんつぶれてしまったら、制御を失った飛行機のようにどんどん失速して低空飛行でフィニッシュまで向かうしかありません。

つぶれないためにはどうしたら良いか。自分のなかで無理のないペースを刻むことです。一流選手ですので気象や身体のコンディションと相談しながら、その条件でのベストなペースを探って走ることは可能です。

しかし、金メダルを目指してレースに臨む場合はそうもいきません。リスクを冒して勝負に出なければいけません。身体が危険信号を出しても先頭集団についていかなくてはいけません。福士選手は果敢に途中まで集団に挑んでいきました。しかし、夏のレースはハイリスクです。福士選手は結果的に無理をするかたちになってしまいました。レースの中盤でつぶれてしまいました。

結果論ですが、もし、最初から無理をしない走りに専念していれば、入賞ラインは超えていたと思います。例えば6位、7位、8位あたりでフィニッシュしていれば、世間様も「まあメダルは獲れなかったけれど、最低限の成績ではあるんじゃない」みたいに感じてくれたのではと思います。実際、そういうレースもありです。前半は力をためておいて、後半になってから少しずつ落ちてくる選手をひろって順位をあげていく。スピードのないタイプの選手はそうしたクレバーな戦術で良い成績をあげますし、市民レースでもベテランランナーの多くはそういうペース配分をします。ウサギとカメ戦法です。

でも、福士選手は日本人では珍しくスピードも兼ね備えた選手ですし、入賞だけを狙うことに意味がないと考えたのでしょう。あくまでメダルを狙うレースをしました。

 

タイムは2時間29分53秒でした。ベストが2時間22分16秒ですので、7分くらいの差で抑えたことは立派だと思います(このへんは市民ランナー感覚ですが)。逆に、すごいなと思ったのは集団から遅れた後に踏みとどまったことです。つぶれた後の1kmは、つぶれる前の何倍も長く感じるものです。相当、耐えて、振り絞って走ったのだと思います。最後は意地で30分を切ってフィニッシュ。そんなこんなも含めての「しんどかった。でも、頑張った」だったのでしょう。

そして、順位も156人出場して14位。十分な成績だと思います。23人がDNFだったことを考えればコンディションの過酷さも伝わってきます。それぞれ悔しさを胸にリタイアを余儀なくされたのでしょう。

 

誰にでも何をか言う権利はあると思いますが、涼しいクーラーのきいた部屋で辛辣な意見をのたまう人々には、炎天下で力を振り絞りながら前に踏み出す一歩を繰り返すことの辛さはいつまでも理解できないと思いますし、もう、すでにそんなことも忘れていることでしょう。

でも、昨今のマラソンブームのおかげで、その一歩の価値を理解できる人が増えているのは良かったと思います。あらためて、リオを駆け抜けた選手たちに「お疲れ様でした」と思い、来年は夏のレースに挑戦しようかなと、残暑のなかジョギングをしながら考えるのでした。

 

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