ランナーのための肉離れ体験記3
前回はこちら。
良い子はマネしちゃいけない、肉離れだけど走ってみようシリーズ第2弾、大阪マラソン2017のリポートです。
右脚の太ももの裏をビリっと肉離れをやってしまってから二週間。そして、10kmちょいしか走れなかった神戸マラソンから一週間。ノートレーニングで安静に過ごしましたが、どのくらい回復したかは分かりません。ただ、どんな状態であれ地元である大阪マラソンは絶対に出場しようと決めていました。
問題はペースです。
神戸は1キロ4分45秒ペースで11kmリタイア。
で、今回は?
強気のキロヨン、1km4分です。
完走は考えていません。できるとも思っていません。ただ、好きな大阪の街をダラダラと走りたくはない。気持ち良く御堂筋や土佐堀筋を駆け抜けたい。そして、キツくなったらリタイアする算段です。13km地点にある中之島の中央公会堂を仮想フィニッシュ地点に設定しました。
いつ、どこで、リタイアしても良いように荷物は預けず、スマホとイコカを持参します。地下鉄など交通機関でエスケープしやすいのは市内中心部を回遊する都市型マラソンならではですね。
そして、服装もランパン、ランシャツではなく、ウインドブレーカーとタイツで臨みました。さすがにリタイアした後にランシャツ、ランパンで大阪の地下鉄に乗る勇気はありません。「ちょっとちょっと、あんた、ズルしたらあかんで。若いんやし、な、今からでも頑張り」とオバちゃんに余計なお節介をかけられるのがオチです。
そうしてスタートしたわけですが、一週間の安静が良かったのか案外スピードにのって走れました。ジョグよりもレースペースの方が、痛みが気にならないようです。
10km通過。患部の張りが強くなってきますが、痛みはまだありません。中之島までこのペースでいけそうです。中央公会堂前、仲間が応援していて止めるポイントです。が、ウインドブレーカーを脱いで仲間に託します。
行けるとこまで、行ってみよう!冒険心に火がつきます。御堂筋のイチョウ並木を下りながら、ペースを保ちます。奇跡的に脚は動いています。応援をいっぱいに受け、大勢のランナーとすれ違いながらやっぱり走って良かったと気持ちが震えました。
しかし、現実は甘くない。20km地点でついに本格的な痛みが姿を現しました。なかなか厳しい痛みです。ハーフの通過は1時間26分。ここが潮時かと沿道のスタッフにリタイアの相談をします。が、思いのほか良いペースだったので勿体無く思えてきて、再び走り出します。
ああ、俺はどこに向かっていくのだろう?無茶な選択は正しいのだろうか?ズンと鐘を突くような痛みは1分くらい耐えると、不思議と数分消えます。ペースが落ちたら今度こそ止まろうと考えていたのですが、何故か1km4分15秒は維持できています。
痛みを堪えながら30km通過。2時間4分。残り12km、キロ4分30秒までペースを下げてもサブスリー可能です。うーん、止めるにヤメラレズ。この辺りから、ハムやお尻のあたりが、暴れ太鼓、乱れ打ちのごとく痛みます。大変なことが起きている自覚があります。が、考えないことにします。
34km地点くらいで脚と尻の痛みはマックス。YOSHIKIのドラムのように激しくなり、脳ミソのなかでは赤いポンポンが舞いながら「紅」が流れ、おかしなテンションになります。
「お前は走り出す。何かに追われるよう」
そして、35km地点。何度目かのYOSHIKIのリバイバルが訪れたときが心が折れて降参しました。止まった瞬間に走れなくなり、その先は脚を引きずってフィニッシュ。途中までガマンして粘りながら、最後に諦めてしまう自分らしいレースでした。でも、どんなレースでも完走は嬉しいものです。
ただ、代償は大きかった。肉離れの患部以外も負担がかかりました。右脚の膝裏の上、外側と内側が内出血を起こして青アザに。1mも走れない日々がしばらく続くのでした。
つづく。