いぜな88トライアスロン2019 ②レース編
レース当日の朝、雨は降っていませんがどんよりした曇り空です。風は強く雲が吹き飛ばされるようにどんどん流れていきます。おまけに雷注意報も出ています。どうなることかと思いましたが、88kmから31kmに距離を短縮して何とか3種目での開催が決定しました。
しかし、これでレースが楽になったかというとそんなことはありません。逆に緊張感が増してきました。個人的にはミドルレースが一番好きなんです。51.5kmのオリンピックディスタンスなどのショートレースは、心拍数が上がって身体がレッドゲージに入り、心臓がバクバク鳴って飛び出すんじゃないかというくらいしんどいです。
一方で、180.2kmのアイアンマン などロングレースは前回の佐渡がそうだったように筋肉が擦り切れ、内臓が機能せず、エネルギーが枯渇して、疲弊しまくります。
どちらがしんどいかは究極の選択です。喘ぎながら前のめりにぶっ倒れるか、足元がフラフラで行き倒れるか。
でも、その中間のミドルは、あくまで相対的にですが、ほどほどの心拍数でほどほどの疲弊で終われるような気がするわけです。まあ、レースの最中はどのみちしんどいのですが。
さて、レースは海を前に神女らの安全祈願から始まります。海や大地に祈りを捧げる思想や伝統を我々現代人は失ってはいけないと思います。つまり「謙虚であれ」ということです。特に今回は天気が荒れています。海、風、大地などに「今日はお世話になります。よろしくお願いします」と挨拶して謙虚に臨みます。
そして朝9時にレースがスタート。スイムは1km。ノーウェットのトライスーツで泳ぎます。伊是名島は遠浅の海で水深が浅く、レース区間はどこでも海底が見えています。晴れればまさに「水色」のごとく抜群に綺麗なのですが、曇りの日は逆に、光が反射しないのでガラスのようにクリアに感じます。
ただ海のコンディションはよくありません。波は高く、なおかつ潮の流れがキツい。潮は岸からみて左から右へと横向きに流れていて、第一ブイをターンしてからは強烈な向かい潮になり、どうにもこうにも進みませんでした。悪条件はみんな一緒だし、自分の場合は気象条件が悪いほどに実力を発揮するタイプです。ところが、どんどん抜かされてしまいました。どうも調子がイマイチです。重りをつけているかのような感じです。
つづいてバイクです。島を一周する20km。風が強くて揺さぶられます。調子が悪かったせいか常に向かい風に感じました。もしくは自分のときだけ風向きが変わっていたとか。
そしてラン。お尻の筋肉が鉄板のように固まって脚が上がらず、最初の登り坂でいきなり止まりそうになります。後ろの選手に追いつかれたのを幸いに、しばらくランデブーします。
おじいの三線が集落に響き、家族の素朴な応援に沖縄の離島の暮らしを感じます。雨がパラパラと降り始めますが、子どもたちから声援と飲み物を受け取り踏ん張ります。子どもの前では格好良いところを見せようと力が出ます。オッサンの意地です。少しずつ前の選手を回収して陸上グラウンドへ。最後の下り坂で両脚が攣りかけるものの、赤土まじりのトラックに入って我慢しながら一例に並んだ子どもたちとハイファイブ。イエーイと喜んでくれます。最後はまずまずの順位でフィニッシュしました。
体育館では島の方々が中止になったアワードパーティの代わりに、そばと牛汁とジューシーなどを用意して下さっていました。ありがたく頂き、冷えた身体に沁み渡りました。それから慌ただしく宿に戻って荷物をまとめて、再び体育館へ行って牛汁をもう一杯。あまりに美味しかったので。
午後1時半の出航5分前にフェリーに飛び乗って、恒例の紙テープが風にはためきます。気持ちがジーンとします。何ででしょう。何かの原風景を見るのでしょうか？いつも島の人たちにはもらってばかりで、何か少しでもお返しできればと思います。
