晴れ時々走れ

マラソン、トライアスロン、人生について

水球とリオとこれから

水球男子日本代表が32年ぶりのオリンピック出場を決めました。

心の底からうれしく思います。

学生時代、一応、水球をやっていましたので、少しでもこのスポーツのことを知ってもらいたいと思い書きます。

こんなにしんどいスポーツはない

水球はとても過酷です。水深2mほどのプールは足がつかないので立ち泳ぎをします。基本は「巻き足」というものです。シンクロナイズドスイミングの選手の脚の動きをイメージすると良いです。水球は兎にも角にも、この巻き足ができないと始まりません。立ち泳ぎが自在になって、ようやく基本的なプレーができるようになります。水球ではボールを片手でしか触れないルールがあります。また、パスやシュートをきちんと投げるために少なくとも胸まで水上に出さなくてはいけません。キーパーに至っては腰まで浮いてシュートを防ぎます。つまり、立ち泳ぎをしている状態が、陸上でいえば「立って休んでいる」くらいの感覚にならないとプレーできません。ちなみに泳ぐのは「歩いて移動する」感覚です。

水球はボディコンタクトの激しいスポーツでもあります。ボールを保持している選手に体重をかけて乗っても構いません(やりすぎは反則をとられますが)。オフェンスとディフェンスは常にせめぎ合っています。水中で組手争いをしたり、押し合ったり、沈めあったり、とにかく無駄にエネルギーを消費します。

サッカーでゴールを決めたとき選手は歓喜のポーズをとりますが、水球の場合、並の選手はゴールを決めた瞬間、プールに沈んでいきます。そして、酸欠になりながら相手の攻撃が始まるまでに泳いで自陣に戻っていきます。

現在、マラソンやトライアスロンを趣味で行っていますが、水球に比べれば楽なものです。たまに遊びで水球の試合に出ると溺れそうになります。逆に、水球で鍛えた体力の貯金(と無駄に培った我慢強さ!)のおかげで、マラソンやトライアスロンをこなしているとも言えます。

水のなかで表現できることの快感

そんなしんどい水球の何が楽しいのでしょうか?もちろんボールゲームとしての戦術的な面白さやゴールを決めたときの得も言われぬ達成感があげられます。そのなかで自分は水の中で自在に動けることの快感を推します。水中でのフットワークは「巻き足」以外にも「蹴り足」「あおり足」など様々あり、これらをマスターすると、まるで水と友達になったような感覚で自由に動けるのです。水生生物に近づいた感覚です。下手くそなプレーヤーでしたが、このことを知っただけでも水球の価値を感じています。

水球はマイナースポーツ?

水球は日本ではマイナースポーツです。水球チームのある大学は全国で40校程度でしょうか。私が学生時代(15年くらい前)はもっと多くありましたが少子化やスポーツ離れで年々減っています。

海外での人気はどうでしょう?実はプロリーグのある国があります。スペイン、イタリア、ハンガリーセルビアクロアチアモンテネグロ、ドイツなどです。特に温泉やプールの多いハンガリーでは国技とも言われているほど盛んです。

ハンガリー動乱を扱った映画では水球の歴史的な勝負「メルボルンの流血戦」を題材にしていました。

そして、この映画を観ると、ハンガリーなどでの人気ぶりがよく分かります。


君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956(プレビュー)

ちなみにこれらのシーンは俳優がプレーしているので決して上手ではありません。一方で映画本編に出てくる速攻シーンでは現役ハンガリー代表が撮影協力をしていて、泳ぎながらのリレーパスで右サイドから左サイドにワイドに展開するなど、経験者から見て驚嘆するプレーも出てきます。

さて、ヨーロッパ以外では、アメリカでも大学で水球が盛んです。インテリ系のスポーツとして認知されています。ハーバードなどのアイビーリーグやカリフォルニアの名門校は大体、水球チームを持っていて、アメフト、バスケなどと同様に大学対抗戦が盛んに行われています(さすがにアメフト、バスケの人気にははるか遠く及びませんが)。

ところで、イギリスのウィリアム王子も大学時代は水球部のキャプテンを務めていました。また、1980年代の競泳のスーパースター、マット・ビオンディも元々水球選手でした。日本では吉川晃司さんが有名ですね。高校時代は年代別の日本代表にも選出されていたようです。あの逆三角形の体型を見ながら水球っぽいなあと感じています。

日本の水球のこれから

日本代表の大本監督の「代表選手の多くが無職」というインタビューがありました。選手たちの主な所属は、海外プロチームやブルボンウォーターポロクラブ、教職、そして、大学です。プロの契約金の額や、ブルボンのチームで給料があるのか知りませんが、経済的には厳しい状況だと思います。引退後のキャリアの保証もありません。

今回、オリンピック出場を勝ち取った背景には、青柳勧選手がブルボンというチームの受け皿を作ったこと、田中宏児選手や青柳選手以来、海外プロリーグでの武者修行が当たり前になったことが挙げられると思います。

しかし、これでは選手と関係者の自助努力に頼るしかありません。国内で水球自体の人気が出ることが大事です。そのためには、ブルボンのようなチームを各地に数チーム作って高いパフォーマンスの試合を定期的に見られる環境が必要だと思います。試合会場ではアリーナ席のような遠い位置ではなく、桟敷席を設けて間近で迫力を感じてもらいます。ギリシャ彫刻のような肉体美をもっとアピールしても良いかもしれません。

試合の様子はアップや水中映像も織り交ぜてネット配信して、スポンサーを募ります。日本には人気スポーツが数多くあり競合しています。また、スポーツ以外の娯楽もたくさんあります。それらに負けないエンターテイメント性が必要になります。

水球はするスポーツとしては面白いです。でも、見るスポーツとして果たしてどのくらい面白さが伝わっているでしょうか?現在、タレント性のある選手がいて注目されています。これから東京オリンピックまでは追い風が吹きます。何とか、水球を盛り上げることができないか考えたいところです。

 

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