晴れ時々走れ

マラソン、トライアスロン、人生について

佐渡トライアスロン2019⑧ ラン後半

前回はこちら。

harehashire.hatenablog.jp

 

ランの2周目に入ると呼吸が苦しくなってきました。ステップを踏むごとに気持ち悪さが増して、胃袋から液体がこみ上げてお腹が波打ちます。商店街のエイドに到着したところで我慢ができずにしゃがみ込んで吐いてしまいました。ランでは毎回のエイドで1杯目にコーラを飲み干して2杯目でお茶を飲んでいました。そのコーラとお茶が絶妙にシェイクされた茶色の液体がまとめて逆流して側溝にドバドバと流れていきました。 消化されていないためか、コーラとお茶そのままの味でした。

 

そして、今回のレースで三度、寝転がります。そばにいた黄色いシャツのボランティアの女子高生が声をかけて水を運んでくれます。でも飲む度に気持ち悪くなり、オエーっと戻してしまいます。ついには吐くものがなくなり、よだれが出るだけでした。

 

汗臭い身体でゲロを吐きながら、よだれに塗れて、身悶えつつ無様に路上に横たわるオッサン。10代の乙女にはどのように映ったのでしょうか?その匂いだけを考えても近づきたくはないと思います。それでも優しく「大丈夫ですか」と声をかけてくれたことをオジサンは一生、忘れないでしょう。結局、ここでも30分ほど横たわります。

 

そのまま、眠っていたかったのですが、立ち上がってレースに復帰します。でも、やっぱり、しんどくて歩き始めてしまいます。というより、目標を失ってしまったからです。ランでも昼寝してしまったので(もはや時刻は夕寝ですが)タイムに対するこだわりもありません。心が折れてしまいました。夕暮れのなかをとぼとぼと歩いて行きます。

 

5kmほど歩いていると次々とランナーに抜かされていきます。脚を引きずっていたり、苦しそうな表情をしていたり、自分よりもっと辛い状態であろうランナーたちが必死に走っています。息が切れています。靴音もドタドタしていてしんどそうです。それでも、どんな走りでも歩くよりは速いものです。抜かしていったランナーたちの汗まみれの背中が遠のいていきます。何人もそういうランナーたちの背中を見送るうちに、だんだんと思うようなタイムを残せないからという理由で腐っている自分が情けなくなりました。

 

最近、大好きなプロレスから教えてもらったことがあります。それは、リングの上で大事なことは「生き様」を見せるということ。プロレスにとって勝ち負けは重要ではありません。倒れても倒れても、苦しくても苦しくても立ち上がる。そのなかで、反撃の一撃を相手に食らわす。そこに、観客はカタルシスを感じるのです。棚橋弘至選手が言うところの「カウント2.9から立ち上がる力」です。トライアスロンのレースでも同じです。遅いスピードしか出なくなっても、リタイアせずにもがいてもがいて前に進む姿。その姿勢こそが素晴らしいのです。

 

カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの「復活力」

カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの「復活力」

 

 

プロレスに出会って良かった。プロレスに救われました。頭の中で"Love and Energy"を奏でます。「Go Ace !」というかけ声とともに走り始めます。最後の折り返しを過ぎてからは歯を食いしばりながら走りました。そして、沿道の応援に精一杯の応答をしました。これが今、見せられる精一杯の「生き様」です。真っ暗ななか商店街の街灯に照らされた通りに戻ってきたとき、レースの部分部分では諦めてしまいましたが、最後だけは諦めずに良かったと身体の芯から感じました。

 

そして、グラウンドに戻ってフィニッシュ。そのまま、気持ち悪さマックスで救護へ。再び呼吸ができず、吐き気に襲われながらも、ほのかに満足感を抱いていました。これで長い長い半日にわたる闘いが終わったのだと。

救護の看護師の方に気持ち悪さと息苦しさの原因を聞いたところ、過呼吸によるものではと指摘されました。なるほど、そうなのかもしれません。確かに顔にタオルをかけて寝転がっていると楽な気がしました。

 

そうこうして回復して着替えをしようとしたところ、衝撃の事実を知ります。実はバイクはその日のうちに撤収しなくてはいけないとのこと。宿までは13kmもあります。車は借りていないので自走で帰らないといけません。まったく想定していなかったので、荷物は山ほどあります。それらを身体のあちこちにくくりつけて、フラつきながらバイクにまたがります。途中に街灯はありません。秋の虫が鳴いています。真っ暗闇のなか孤独にこぎ続けるこの時が間違いなく一番しんどかったです。

 

30分後にようやく宿の近くのコンビニに辿り着きます。まぶしく煌めく光と清潔な店内と、何十回も汗をかいては乾き、土埃にまみれ、ゲロもくっつき、薄汚れたサイクルジャージ姿の自分とのギャップに驚きます。力を振り絞って冷蔵庫の扉を開けてビールを取り出したとき、地元の客のおばさんが声をかけてくれました。「トライアスロンの人でしょ。すごいね。お疲れ様」。何気ない言葉が身に染みました。

ありがとう、佐渡。また、来るよ。

 

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