佐渡トライアスロン2019⑥ バイク後半
前回から続く。
30分ほど歩道で寝転びながら、東京の江東区・江戸川区のトライアスロン連合の方々から冷えた麦茶を何杯もおかわりして、タッパに入った梨を頂き、メンバーのために用意していたきゅうりまで頂いてしまいました。チームからはたくさんのメンバーが参加していたそうですが、その誰よりも恩恵に預かりました。おかげさまで頭の痺れや粗い呼吸が収まりました。名も知らぬ選手を支えてくれたことに本当に感謝を申し上げます。最高のホスピタリティでございました。ありがとうございました。
さて、30分も休憩をとったのはこれまでのレースで初めてです。1秒を削りだそうとスタートから頑張ってきましたが、そんな努力はあっけなく吹き飛んでしまいました。貯金はすっからかんです。むしろ、大幅にマイナスです。それでも立ち上がって前を向いて進むのがトライアスロンです。もはや何十人、何百人に抜かれたか分かりませんが、追撃態勢に入ります。両津の街を駆け抜け、小佐渡と呼ばれる佐渡南部に向かいます。バイクパートの後半戦です。
向かい風区間をめげずに踏ん張り、終盤のクライマックスの小木の坂も何とか越えました。ペースは上がりませんがしっかり漕ぐことはできています。このまま、最後まで行くぞと思っていましたが、170㎞を過ぎて残り20km切ったあたりで再び異変が。脚が回りません。頭が痺れて、息が上がってしまいます。さっきと同じような症状です。海岸線で自転車を停めて再び歩道に寝転がります。バターン。
アスファルトにこもった熱とゴツゴツした突起を背中に受けながら、頭がグワングワンとかき混ぜられたように感じます。トリップするのはこんな感じなんでしょうか?苦しみから解放されて、潮騒の音を聞きながらラブ&ピースな気持ちになります。佐渡の海岸でボブ・マーリーが歌っています。
目の前の道路では何台もの自転車が抜かしていき、ときおりオフィシャルのバイクが停まっては体調を確認してくれます。近くのボランティアスタッフも駆けつけてくれました。「ありがとうございます、でも大丈夫です!」と何度も答えますが、大丈夫じゃない人ほど大丈夫というので信用してもらえません。
結局、ここでも30分くらい寝ました。長い長い時間を眠っていたような気がしましたが、せいぜい30分くらいでした。意を決して起き上がりバイクにまたがり、現実世界に戻ります。苦しみから解放された彼岸から、苦しみや悩みのあふれる此岸へ。もはや1秒を削りだすというようなストイックな気持ちは微塵もありません。とにかく完走すること。それだけを目標にバイクを走らせるのでした。