【南紀白浜トライアスロン】レースは旅
トライアスロンの魅力はレース自体が旅のようなものだということです。
この点において、先日、出場した南紀白浜トライアスロンは実に面白いレースでした。コースを設計したレースディレクターは見事です。
旅の要素として大事なことは、まず第一に、その土地ならではの風土を味わえること。次に景色が刻々と移り変わっていくこと。特に旅人を驚かせる意外性のある展開が大事です。
一般的にオリンピックディスタンス(スイム1.5km、バイク40km、ラン10km)のレースは交通関係など運営上の制限のため、同じところをぐるぐる回る周回コースが多くなりがちです。しかし、南紀白浜トライアスロンは先に挙げた旅の要素が満載で、ロードムービー的感覚に浸れる、最高のレースでした。今後、この大会に出場を考えている方は、驚きや魅力が半減するので、ここから先はスルーすることをおススメします。
では、コースの魅力を順番に見ていきましょう。
スイム
真っ白な砂をしきつめた白良浜がスイムの会場です。ハワイのワイキキビーチと姉妹浜となっているほど美しい砂浜で、この景色を見ただけでも感激します。砂はかなり細かくサラサラで、足の指の間に入り込む感覚がとても気持ち良いです。海の透明度は高く、水温も適度で、もう泳ぐこと自体が楽しくて仕方ありません。750mを2周回しますが、折り返し地点から見える白良浜と温泉街の景色もこれまた美しいです。
バイク
ビーチの遊歩道に設置されたトランジッションT1でスイムからバイクに移ります。温泉街に繰り出し、硫黄の匂いを嗅ぎながら坂道を上っていくと、海沿いのワインディングロードに出ます。両端に並ぶ高さ数十mのヤシの木が南国気分を盛り上げてくれます。南国の木々の力強い緑の間からは、ときおり雄大な太平洋を見下ろすことができます。
バイクは一部区間を5周回するのでさすがに単調になりますが、最後にとっておきのサプライズが待ちうけています。最大斜度13%とも言われている劇坂です。1kmの間に100m標高を上ります。思わず降りてしまおうかと考えてしまうほどの坂道で、トライアスロンのレースではありえない勾配です。
しかし、苦難のあとにはさらにサプライズが用意されています。坂を上り切ると一気に景色が開けて旧空港の跡地が広がります。滑走路は1200mあり、はるか先を行く自転車が米粒のように見えます。高台を吹き抜ける風を受けながら、滑走路を疾走するのは、なかなかできない体験です。
ラン
バイクからランのトランジッションT2はこの旧滑走路の端にあります。T1とT2が別の場所にある珍しい大会です。
照りつける太陽と路面から反射する陽光を受けながら滑走路を1kmほど走ります。途中から脇道にそれてトレイルの区間に入ります。木陰のなか細かいアップダウンをいくつか過ぎると舗装路に出ます。その後、2kmから5km区間まではずっと下り基調で温泉街に帰ってきます。このあたりから地元の方々や通りすがりの観光客から暖かい声援を受けます。
坂を下ると白良浜を左手に見ながら遊歩道を走り、熊野三社神社の森に入ります。ほんのちょっとの区間ですが、森の中に入ると体温が下がり、静謐な雰囲気に気持ちが引き締まります。この感覚が好きです。再び海岸線に出ると、沖合に円月島を見ながら走り、総合体育館でフィニッシュとなります。
ということで、白浜トライアスロンは旅の醍醐味が満載です。
コースは白浜ならではの景色が活かされ、晴れた日は特に色彩が鮮やかで、都会では感じられない自然の力強さを感じます。今年で3回目の大会ですが、この時期の白浜は晴天率が良いのかこれまで毎年晴れているそうです。
そして、スタートとフィニッシュ地点が違うこと、トランジッションのT1とT2の場所が違うこと、ワンウェイのコースにすることで変化に富んだ景色を実現しています。さらに、ヒルクライム、滑走路、トレイルまで盛り込まれて、意外性のある展開に冒険心をそそられます。
南国の自然と風土を旅する南紀白浜トライアスロンが、来年以降も開催されることを期待します。白浜町民のみなさま、運営した大会関係者の方々、本当にありがとうございました。