晴れ時々走れ

マラソン、トライアスロン、人生について

ワキウリさんに会った

今年の神戸マラソンのゲストランナー、ダグラス・ワキウリさん。S&B食品で瀬古選手らと活躍して、1988年のソウルオリンピックではケニア代表として銀メダルを獲得しました。

 

ワキウリさんとはこれまで不思議な縁があります。初めて会ったのは2006年の久米島マラソン。ワキウリさんはゲストランナーとして出場していました。沖縄の灼熱の太陽のもとに行われたレースで、ワキウリさんは給水所で抱えきれんばかりにスポンジをとっては、周りのランナーに配って渡していました。自分はその集団にいて水をいっぱいに含んだスポンジを受け取った一人でした。

 

その時、初めてワキウリさんのことを知りました。ちなみに、レース後に競技場で行われたパーティでは、ワキウリさんがケニアの民族衣装を着て登場してノリの良い曲を披露。実はミュージシャンでもあり、強烈に印象に残りました。

 

その後、2008年にケニアに旅行に行く機会がありました。ナイロビ市内にあるアボレータムという森林公園を早朝に走っていると、いきなり日本語で話しかけてくる人がいました。

「ニホンジンですか?ワタシ、ワキウリです。」

 

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それは、それは、驚きました。人気のない森林公園でまさか、あの時のワキウリさんに出会えるなんて!沖縄で出会ったときのことなど話をした後、ワキウリさんは颯爽と走って行ってしまいました。

 

次に会ったのは、2010年。ナイロビマラソンに出場したときでした。 

 

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この大会はケニアの市民マラソンですが、Standard Charterd Bankという世界有数の銀行がスポンサーをしていることもあり、上位入賞者にはかなりの金額の賞金が出ます。そのため、ケニア各地から我こそはという若手ランナーが出場します。国際的にはまったく無名の選手たちですが、優勝タイムは2時間10分くらいで10位でも2時間13分くらいです。標高が高く(1700mくらい)、気温も高めなこと(10月の平均最高気温24.7℃)を考慮すれば、かなりハイレベルな大会です。

 

ちなみに、数十人のケニア人ランナーが集団で駆け抜けていく様は圧巻です。賞金を得るために、おそらく国際大会よりも速いペースで果敢なレースを行います。そして、次々と途中リタイアしていきます。

ワキウリさんは、この大会に出場する選手のコーチとして参加していました。そして、レース後にワキウリさんにある場所に連れて行ってもらいました。

それはキベラスラムです。

 

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アフリカ最大のスラムで数十万人が住んでいると言われています。電気、ガス、水道のインフラは整備されていません。日本人の旅行者がふらっと行ける場所ではありません。ただ、ワキウリさんが案内をしてくれると、住人たちは物珍しそうに少し遠巻きにしながら、歓迎してくれます。

 

ワキウリさんはこの地で、教育の機会が得られない子供たちに学校を作り、さらに、ランニングクラブを運営しているのでした。 

ケニア人はみな足が速いわけではありません。

世界で活躍する選手たちの多くは、ナイロビから離れたリフトバレーと呼ばれる地域の出身者たちです。その地域の生活習慣によって鍛えられ、なおかつ能力に恵まれた選手がリクルートされて、優秀な選手へと育っていきます。

 

ナイロビのスラムに住んでいる人たちは、貧しいため、普通に生活をしていれば、そもそも走る機会すらありません。ワキウリさんはそうした子どもたちに、走る楽しさを教え、活躍する選手も育てようとしていました。

 

その後、2011年にもう一度会って4年ぶりの再会でした。当時と変わらず、流ちょうな日本語で冗談を交えながら話しかけてくれました。

 

明日の神戸マラソン。神戸とキベラのことを思いながら走りたいと思います。

アサンテサーナ!

 

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