晴れ時々走れ

マラソン、トライアスロン、人生について

大迫は負けなかった

東京マラソンをテレビ観戦しました。

 

これまでマラソンや駅伝をテレビで見ることはそれほどありませんでしたが(見るよりは走る方が好きなので)、副鼻腔炎を発症して体調が芳しくなく、コロナウイルスでモチベーションも途切れている中、自宅でテレビを見ながら過ごすことにしました。そうしたら今回のレースがあまりにも面白くて、最初から最後までそれこそ食い入るように見てしまいました。

 

東京オリンピックの残り一枠をかける争いに、いわゆるビッグ3と言われる大迫傑選手、設楽悠太選手、井上大仁選手が出場して、先日の丸亀ハーフマラソン日本新記録を出した小椋裕介選手、個人的にずっと応援している佐藤悠基選手、そのほかにも一級品の選手がわんさか出場して役者がそろっている上に、ペースメーカーのタイムが第1集団で2時間3分台、第2集団で2時間5分10秒という超ハイレベル設定でした。

これまでのマラソン大会であれば、それぞれの選手の最適解を考えて適正なペース配分が設定されますが、今回の大会は驚くほどの負荷を選手に課してきました。まるで、ついてこられない者に用はないと言わんばかりに。

 

そして、レースが開始。

 

超高速の第1集団に井上と大迫が入ります。続く高速の第2集団にも設楽など大勢の選手がくらいついていきます。この展開が面白くないわけがない。いつだってリスクをとって常識を打ち破るものに観客は狂喜乱舞します。自分なんて死に物狂いでダッシュしても1kmしかついていけないペースです。

 

特に中盤までの井上の走りは見事でした。アフリカ勢に囲まれた第1集団にいても周りと遜色ない伸びやかでキレのあるフォームでした。身長168cmと思えないほどの大きさを感じます。大迫は集団の後ろについていましたが、23kmすぎから遅れ始めると次第に単独走になります。それに対して井上は第1集団が分裂してできた新しい5人くらいの集団に入ることができました。解説の瀬古さんはこの展開に「井上はラッキー」と分析しました。集団が引っ張っていってくれるからです。正直なところ、このレースは井上が勝ったと思いました。

 

ところが、30kmすぎに金哲彦さんの思わぬバイクリポートが入ります。集団のペースが落ちていて大迫との距離が詰まっているとの内容でした。井上らの集団は良いペースを刻んでいたのではなく、前半のハイペースがたたり集団ごとペースダウンしてきたのでした。それに対して大迫はいったんは遅れたもののズルズルとは失速せずに、常に井上を捕まえられるだけの距離は確保していました。

 

ここから大迫の野性味あふれる走りが見られます。前を行く獲物が弱ってきたとみるや一気に捕らえにかかります。そして、まるでサバンナの冷静な肉食動物の狩りのように一気に仕留めます。苦しい表情の井上を仕留めた後は無表情で淡々と引き離していきます。まるでBBCの自然ドキュメンタリーを見ているかのようでした。

 

大迫の走りはなおも前を追撃しますが、35kmの給水ポイントではスペシャルもジェネラルも摂らなかったように見えました。そのせいか分かりませんが終盤はしきりに脇腹を抑え始めます。けいれんが始まっていたのかも知れません。

それでも必死の形相で前を見つめています。彼はいったい何を見据えていたのでしょう?去年の東京マラソンでの途中危険?MGCでの不甲斐なさ?自分が最速なんだというプライド?

過去に佐藤悠基に日本選手権10000mで0.38秒差で惜敗してロンドンオリンピックを逃したときもそうでしたが、大迫は驚くほどの感情をときたま発露します。普段大人しい子が突然怒りを爆発して周りが戸惑うように(ちなみに大迫は佐藤にこの年から3年連続で10000mで僅差で敗れました)。

 

自己ベストを20秒あまり上回る2時間5分29秒でフィニッシュ。テープを切る前から顔が感情で歪み、インタビューでは涙がこみ上げていました。その理由は「個人的なこと」として明かしませんでした。自分もそうですが側から見たらどうでも良いけれど、その人には譲れないプライドというものがあります。そういうものを大事にしている選手は極めて美しく感じました。

 

 

最後に、東京マラソンのエリート大会を開催するにあたってツイッター上には批判の声がありました。例年の10分の1の7万人の観客が沿道に訪れたそうです。これに対して非難する人たちはいったい何に対して怒っているのでしょう?

 

感染の危険性でしょうか?

オープンエアーで行う200人規模のマラソン大会でコロナウイルスを蔓延させる危険性はないと考えます。なぜなら選手は前述したようなスピードで駆け抜けていき、それを見る観客達もわずかな時間しかその場所に滞在していないからです。ライブ会場や屋内スポーツ会場などの密室空間での過ごし方とはまったく違います。

 

主催者側の観戦自粛の呼びかけを無視したからでしょうか?

確かにそうではありますが、あくまで禁止ではないので各自の頭で考えて各自の責任で行動すべきものだと思います。人の行動を強制的に制限させられる社会は息苦しいと感じます。

 

自分たちが我慢しているのに気にくわないから?

その気持ちは分からないでもありません。だから他の催し物でも過度の自粛はやめた方が良いと考えています。一番怖いのは戦前の国会総動員法のような空気感だと思います。

 

あくまで個人の意見です。

 

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