晴れ時々走れ

マラソン、トライアスロン、人生について

箱根駅伝マジック

箱根駅伝を見ると毎度のことですが、魔法をかけられます。選手たちの若々しい肉体と躍動感の走りを観て、気持ちが20歳ほど若返り、「自分も同じように走れるのでは」と錯覚をするわけです。

 

それにしても「箱根マジック」の効果はすごいですね。テレビで観戦しながら、4年生の思い、3年生、2年生、1年生、そして、補欠やマネージャー、それぞれの気持ちに簡単に憑依できてしまいます。選手の走りを見ながら、風を切る感覚、アスファルトの反発力、胸を圧迫する鼓動を自分のことのように感じます。どれだけAIが発達してVRやARの技術が発達しても、自らの身体性から呼び覚まされる感覚に勝るものはないのではないでしょうか。

 

去年の秋、家族旅行で箱根に出かけた折、早朝に箱根駅伝の5区と6区の一部を走ってみました。初日は強羅から箱根湯本までの往復。次の日は強羅から芦ノ湖までの往復。ともに20kmくらいで獲得標高は650mくらい。走ったら分かりますけれど、この勾配をキロ3分30秒くらいで走っていくのはバケモンです。シューズは強力な磁石がついたかのように地面にへばりつき、身体は荷物満載のリュックサックか子泣き爺を背負ったかのように重く、心拍数が上がっては滝汗がドバドバ流れます。

 

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有名なコースなので誰か走っている人がいるかと思いきや誰一人として見かけませんでした(自転車の方は何名かすれ違いました)。つまり、ジョギングをするようなところではないということです。ただ、箱根旅行に行く際には一度、この区間を走ってみることをオススメします。何事も身をもって知ることは大事です。思考や想像力の幅を広げてくれるとともに説得力を増してくれます。箱根駅伝観戦が何倍も実感をともなって感じられますし、友人知人にしたり顔で解説ができたりするわけです(笑)。

 

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さて、今回の第95回箱根駅伝でもっともワクワクしたのは、レースの流れを決定づけた8区で東海大の小松選手が東洋大の鈴木選手に追走するシーンです。先にタスキを受けた鈴木選手はすぐに小松選手にピタッとつかれてしまいます。しかし、下がりたくても下がれません。この気持ちはよく分かります。良いペースで刻んでいるのにペースを落とすことは勿体ない。しかも、確実に迫ってくる青学の追撃もかわさなければいけない。自分の脚を信じて行けるところまで行く、というのは仕方ない戦術です。私もトライアスロンのレースでは何度かこういう経験をしました。同じレベルのライバルにずっと後ろにつかれて、じわじわと襲われる気配を感じながら走るわけですが、得てしてやられるというオチを迎えます。それだけ後ろは楽なんです。

 

一方で、小松選手は逸る気持ちを抑えながらも、獲物を襲うタイミングを的確にうかがう肉食動物のような雰囲気でした。自分もこういう展開は大好物です。レースでは区間限定のペーサーを見つけます。そして、そのペーサーに適度にムチを入れて引っ張ってもらい、適当なところでバイバイします。小松選手はどのタイミングでどんな速さと距離でアタックを仕掛けるか綿密に計算していたと思います。そこにはリスクもあります。もし、アタックが失敗して逆に後ろについてこられたら台無しです。今回は見事に仕留めたうえで区間新記録も達成しました。

 

こうした上位で凌ぎを削る選手たちではなく、中継放送では目立たない大学(それでも本戦に出場している時点で選手のレベルはすさまじいわけですが)のなおかつ中堅どころの選手たちに実は一番、共感したりします。それは、自分のこれまでの人生のポジションによく似ているから。

決して強くないチームにおいて最上級生でギリギリ、レギュラーを獲得するというのが自分のこれまでの人生でした。タスキリレーの際に一瞬だけ画面に映る選手たち。それでも、その選手たちの人生を感じずにはいられません。ネットで記録を見ながら、数秒から数十秒、前の順位のチームと縮めた。相手は上のレベルの選手だった。そのひそやかな誇りや輝きを静かに称えるわけです。 

 

そんなこんなでお正月が終わりました。佐藤悠基選手の時代から応援していて、毎年、実力ある選手をそろえながら本戦で微妙な順位に沈んでいく姿を見ていた身としては、東海大学の初優勝は本当に喜ばしく心からおめでとうと伝えたいです。これで、青学、東洋、東海の三強時代が訪れればますます盛り上がるでしょう。これだけテレビ離れの時代に、ますます高視聴率をたたき出す箱根駅伝の価値はすごいですね。

ナイキとアディダスに対抗して、公式スポンサーのミズノがしっかり露出できたのも良かったです。

 

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