走るためのニンジン
少しずつ走る習慣が戻ってきました。股には股ずれの小さな赤いかさぶたの痕が点在していますが、それにも慣れてきました。シューズを履いて外に出るまでの抵抗感は少なくなりつつあります。それでも、まだ走ることを億劫に感じたり、怠惰の顔がのぞいたりするので、このところ、いかにすれば練習するモチベーションを上げられるかについて走りながら考えていました(考え事しながら走ると時間が早く過ぎるので好きなんです)。
モチベーションにはインセンティブが必要です。つまり、目の前にぶらさげるニンジンが必要なわけですが、短期的な報酬と長期的な報酬を組み合わせることが大事だなと感じました。
それぞれ時間軸で表現するとこんな感じです。
- 短期的なインセンティブ。一日単位の報酬です。「きょう走れば、美味しいご飯とビールを飲めんぞ」
- 中期的なインセンティブ。一ヶ月単位の報酬です。「きょう走れば、今月の走行距離は100km突破する。がんばんぞ」
- 長期的なインセンティブ。一年単位の報酬です。「きょう走れば、今年の目標とする大会に向けて脚力がつき、当日はベストを更新できんぞ」
個人的な感覚ですが、走る理由を複合的に持つとお得感があり、よりモチベーションがアップして、練習への一歩を踏み出せる感じがします。
さらに報酬の時間軸は、超短期と超長期があります。
- 超短期的なインセンティブ。その瞬間の報酬です。「いま緑の中で風を感じて走ったら気持ち良いだろうな」
- 超長期的なインセンティブ。一生ものの報酬です。「走り続ければずっと引き締まった体型で健康でいられる」
この二つのインセンティブは実際、最初の三つのインセンティブよりも有効な感じがします。その理由は「練習」臭さがないことです。タイム向上をインセンティブにした場合、どうしても「練習」のイメージが強くなり、しんどさが前面に出てしまいます。
また、行動経済学では「現在バイアス」というものがあります。将来の報酬よりも、現在の報酬を優先してしまう人間の性質のことです。美味しいご飯とビールを報酬にした場合、走った後にご飯とビールがより美味しくなるのは分かっていても、いまそれを欲しくなってしまいます。なので、案外と有効なのは超短期的と超長期的なインセンティブではないでしょうか。
ところで、負のインセンティブを働かせるのも一つの方法です。行動経済学で「損失回避」というものがあります。人間は得することよりも、損することを嫌うという性質です。この観点を取り入れると、「走ったらこんな良いことがある」と自分を鼓舞するよりも、「走らないとこんな嫌なことがある」と脅しをかける方が効果があると思われます。
確かに思い当たることはあります。例えば、「今日は走ろう」と決めて時間を確保したのにだらだら過ごして結局、走らないままの日は何をやっても、自分が嫌になって楽しめません。「そういう気持ちは全てを台無しにするので嫌だな」と思えば、重い腰も上がるかもしれません。
行動経済学について私自身は知識がありませんが、オイコノミアで有名な大竹文雄さんの本はオススメです。
競争社会の歩き方 - 自分の「強み」を見つけるには (中公新書)
- 作者: 大竹文雄
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- 発売日: 2017/08/18
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ということで、いろいろなモチベーション喚起法について考えてみましたが、注意すべきはいろいろと理屈をこねくり回し始めると気持ちが萎え始めてしまうことです。そういう点では、やっぱり超短期的なモチベーションがシンプルで良いと思います。
カルペ・ディエム。今を生きよう。