晴れ時々走れ

マラソン、トライアスロン、人生について

鯖街道ウルトラマラソン2017④レース後半

古来、人々は旅人に優しく接してくれます。イスラム教ではそうした教えが明確にあるし、古今東西どこでも旅人は大事にされてきました。そして、鯖街道ウルトラマラソンでも選手たちは旅人のようにもてなされます。

 

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公式のエイドステーションだけではありません。朽木村の山本酒店を過ぎてしばらくすると、2人のおばさんが道端の石垣に腰を下ろしていました。ちょうど家から出てきたばかりのようです。近づくとタッパを差し出してくれました。中には冷やした甘夏みかん。これが本当に美味しくて、ほんのりとした苦味が疲れた身体と頭を覚醒してくれました。

エンデュランスレースでは次第に甘いもの、しょっぱいものを受け付けなくなります。そうしたなか苦味という味覚はとても新鮮です。エイドステーションではオレンジやグレープフルーツを好んで食べましたが、薄皮のほのかな苦味が美味しかったです。

また、薄皮の繊維質を噛みしめるたびに力が漲っていく感じがしました。噛むという行為は、人間の根源的な力とつながっているようです。多くの選手がやわらかい補給食を好みますが、私は断然、歯応えのある補給食が好みです。

 

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さて、そうこうして久多のエイドステーションに到着。「あと、どのくらいですか?」と聞くと「ここが大体、中間点」だということ。「まだ、半分!」という現実に打ちのめされ、疲れが一気に押し寄せました。今回のレースでは距離表示をまったく気にせずに走っていましたが、個人的な感覚では3分の2くらい過ぎたのではと思っていましたのでかなりショックが大きかったです。

 

実はこのエイドの少し前、コースは京都市に入っていました。「京は遠ても十八里」と言うものの行政区としての「京」は遠くありません。京都市は実際かなり大きく、縦に50kmくらいはあるのです。福井県から走って来て京都市に入るともうすぐフィニッシュという感覚になるのですが、鯖街道ウルトラマラソンの半分は京都市内を走るレースなのです。

 

ここまで、4時間、40km近くを走って筋肉はかなり消耗。こんなことなら、もっと抑えて走れば良かったと思うのは後の祭り。人間の身体というのは大体フルマラソンの運動強度で限界が来るようです。覚悟を決めて2回目の山に入ります。

 

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この辺りでは前後を走るランナーもまばら。山のなかで一人きりの区間も長くなります。脚は重たくて重力の存在を実感します。どこか違う惑星に降り立ったようです。それでも、少しずつ順位が上がっていったので、しんどいのは皆、同じだったのでしょう。

 

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鯖街道の標識が朽ちて落ちています。それでも、ちゃんと行き先を示してくれています。鯖という文字を見て、かつて長島茂雄さんがサバを漢字でどう書くのか尋ねて、「魚へんにブルー!」と言ったエピソードを思い出しました。正確には右側は「青」ではないのですが、この標識は「青」に見えます。

 

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峠にはお地蔵さんも祀られていました。いつから、ここにあり、誰が新しい祠を作ったのでしょうか?旅の守護神に一瞬、お参りをして行きます。そして、これまで、ここを過ぎ去った人々に思いを馳せます。お地蔵さんが見つめた記憶、記録を追体験してみたいものです。そうした記録をデータとして集める地蔵ログなる取り組みをしたら面白いかもしれません。

 

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オグロ坂峠を越えて八丁平を進みます。このあたりから、次のエイドステーションが恋しくなります。前半のエイドステーションは牧歌的な村の雰囲気でしたが、後半のエイドステーションは砂漠のなかのオアシスでした。到着すると、飲み物と食べ物にむしゃぶりつきます。

 

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このあたりで半鯖(小浜からスタートする本鯖に対して、梅の木からスタートする半分のコース)の人たちに抜かれ始めます。彼らはさすがに元気です。エンジンを全開にして上り坂も力強いトルクで駆け上がっていきます。一方、こちらは少しの勾配でもすぐにエンスト。

そんな自分を表すようなオブジェを発見。路傍に朽ち果てた軽トラ。木が運転席を突き抜けて茂っていて、戦跡のような雰囲気を醸し出しています。ここまで放置されるとアートです。

 

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ここから再び山を登って行きます。一枚だけ良い写真が撮れました。新緑と真っ赤に燃える山ツツジ

 

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終盤のエイドステーションで写真を撮る気力もありません。ただ、後半のエイドになるほどハイテンションな人たちがパワフルに盛り上げてくれたことは覚えています。

花脊峠から最大勾配15%の坂を下りて行きます。自転車でヒルクライムをしているローディの皆さんも鬼気迫る恐ろしい表情をしていますが、この勾配を下る方もかなりしんどいです。500mほどを一気に降りていきます。位置エネルギーを運動エネルギーに変換するのですが、あまりに急変換のためヒザと筋肉にダメージをしっかりと刻んでいきます。ああ、登って苦労して、降って苦労するとは、なんとも勿体ない。

 

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ヒザをガクガクさせながらようやく鞍馬へ。ああ、鞍馬!ここまで来てようやく、なじみのある地名にほっとします。昔、京都に住んでいたとき、鞍馬は果てしなく遠いイメージでした。叡山電鉄で山超え谷超えようやく到着する最果ての地。そんな鞍馬も、遙か日本海からの行程に比べれば洛中も同然。

 

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ここから先は記憶も朧気です。朦朧としながら加茂川を下っていきます。市原、舟山、MKボウル、北山通り、北大路通り。街中に近づくにつれて気温も上昇してジリジリと肌を焦がします。かなり息苦しい状態だったのですが、頭のなかで懐かしい歌をヘビーローテーション。「青雲はきわみ、はるかに我らの眼をむかえ、照る日は光ただ差し、我らの行く手を映す」。なつかしのデルタが見えてきた時は、得も言われぬ感情が押し寄せました。

およそ8時間の旅。20位以内の目標を達成してフィニッシュ。

 

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しばらくは息が苦しくて動けませんでした。完全に熱中症です。ビニール袋に氷を入れてもらい、頭や首筋、脇などをひたすら冷やしますがちっとも冷たさを感じません。熱は身体の表面だけでなく、筋肉の代謝によってどんどん生まれます。フィニッシュゲート近くの芝生で悶え苦しんでいたら、スタッフの方が機転を利かして、段ボールで寝転ぶ私の周りに小屋を作ってくれました。この閉じられた空間がとても心地よく、30分ほど寝転ぶうちに気持ち悪さが薄れて回復してきました。

 

たまたま通りがかった観光客の方が、「どこから走ってきたのか?」と尋ねるので、「日本海の小浜」からと答えると唖然としていました。そりゃそうですよね。自分が逆の立場だったらそういう反応をします。オジさんとオバさんのびっくりした表情を見たとき「ああ、辛い思いをして走って良かった」と心の底から満足感が広がりました。

 


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